帆布(はんぷ)とは?キャンバスとの違い、生地の特徴、号数・オンスの意味を分かりやすくご案内します。
帆布とは
帆布とは、綿や麻といった天然素材を「平織り」で織った厚手の生地のことです。かつて、風を受けて船を進ませる帆船(はんせん)の「帆」に使われていたことから、「帆布」と呼ばれるようになりました。帆布は平織の一種ですが、撚糸を使っているのが特徴です。ねじった糸を使うことで生地の強度を上げたり、毛羽立ちを減らしたりしています。
帆布の特徴は何といってもその優れた機能性。耐久性や通気性も良いことから、古くは帆やパラシュート、現在ではバッグやエプロン、カーテン、靴など身の回りにあるさまざまな製品に使われています。
そんな高い機能性を可能にしているのが、「平織り」という製織技法です。平織りは、経糸(たていと)と緯糸(よこいと)を交互に織っていく最も基本的な織り方で、糸が交差する点が多くなるため、頑丈で摩擦に強い仕上がりになります。使う糸の種類や撚り合わせ本数などによって、厚みや質感、風合いの異なる生地を織ることができます。
帆布とキャンバスの違い
帆布は、しばしば「キャンバス」とも呼ばれます。キャンバス(canvas)とは、ギリシャ語由来の言葉で「麻で作られたもの」という意味。基本的には、呼び名の違いだけでどちらもほとんど同じものを指しますが、アパレルやテキスタイルの業界では、若干意味が異なります。
アパレルやテキスタイルの業界では、日本製のものを「帆布」、海外製のものを「キャンバス」と呼ぶことが多いです。その違いは、生地の厚みや重さを表す単位にあります。帆布は「号」、キャンバスは「オンス(oz)」という単位で表し、それぞれ厚みや重さの基準が異なることから、別々のものとして扱う場合があります。
帆布の主な生産地
国産帆布のおよそ7割は岡山県倉敷市で生産されています。その他に広島県尾道市、滋賀県高島市などが有名な産地です。世界的に見ると、帆布の生産地のトップは中国です。中国のように綿花の生産量の多い南アジアも、次いで帆布生地の生産が盛んな地域です。
帆布の製造方法
製織方法は大きく分けて、以下の4つがあります。
「シャトル織機(しょっき)」
「レピア織機」
「エアジェット織機」*帆布の製造方法は現在こちらが主流です。
「ウォータージェット織機」
詳しくご案内します。
シャトル織機
手織りの作業をそのまま機械化した織機で、「シャトル(杼)」と呼ばれる舟形の道具に緯糸をつけて往復させ、経糸の間に糸を飛ばして生地を織ります。織機の中で唯一、生地の端に「セルビッチ」と呼ばれるほつれ止めの“耳”ができることが特徴です。倉敷で生産される帆布のいくつかはシャトル織機で織られているものもあります。
レピア織機
「レピア」と呼ばれる剣のような形をした道具を両側に差し込み、片側のレピアが緯糸を中央まで通し、反対側のレピアがそれを受け取って端まで運ぶことで生地を織る製織方法です。シャトルを必要とせず、糸が一方向に飛ぶので、シャトル織機よりも生産スピードが高いという特徴があります。
かつては「シャトル織機」と「レピア織機」が製織方法の主流でしたが、高速運転が難しく生産性が低いことから、今ではほとんど使われなくなりました。
エアジェット織機
圧縮した空気の勢いを利用して緯糸を飛ばす製織方法です。帆布はエアジェット織機で織られます。シャトル織機やレピア織機のように緯糸を飛ばす道具が必要ないため、高速で生地を織ることができます。主に綿や麻といった天然繊維で生地を織る際に使われます。
ウォータージェット織機
水の勢いを利用して緯糸を飛ばす製織方法です。エアジェット織機と同じように緯糸を飛ばす道具が必要ないため、高速で生地を織ることができます。ただし、水を使うため、吸水性のある天然繊維には不向きで、主に合成繊維で生地を織る際に使われます。
ちなみに、色や柄のある帆布は「先染め」「後染め」という染色を施しています。先染めとは、糸の状態で染色し、製織したもの。後染めとは、製織してから、生地の状態で染色したものです。縞や格子状の模様は先染め、全体的に色が付いているものは後染めの生地です。
帆布の魅力と愛される理由
長年愛され続け、エプロンやバッグ、アウトドア用品などさまざまなアイテムに使用される帆布。そんな帆布のもつ4つの魅力についてご紹介します。
・耐久性がある
・耐水性がある
・通気性がよい
・経年変化を楽しめる
耐久性がある
帆布は、もともと船の帆に使われていたほどに丈夫な生地です。よりあわせた綿糸を平織りにした厚手の生地なので、とにかく耐久性に優れており、摩擦にも強いのが特徴です。
耐水性がある
高密度に平織りされた帆布は、織り目が非常に細かいので水を通しにくい性質ももっています。突然の雨にも強い帆布生地は、バッグやアウトドア用品にも広く使われています。
通気性がよい
綿や麻などの天然素材でつくられた帆布は吸湿性に優れているだけでなく、よりあわせた糸の細かな隙間が空気を通すため通気性も抜群です。
経年変化を楽しめる
帆布は、使い込むほどに生地がやわらかくなり、風合いの変化を楽しむことができます。そんな経年変化とともに自然と愛着がわくところも帆布の魅力のひとつです。
帆布の号数とは?
帆布には1〜11号までの号数があり、号数が小さいほどよりあわせる経糸(たていと)と緯糸(よこいと)の本数が増えていくため、「厚い」生地となります。厚い帆布は、馬具や業務用の生地としても使用されています。わたしたちにとって身近な衣料品としてよく使われるのは8〜11号の帆布です。8号はハリのある厚さで型崩れしにくく、11号は家庭用ミシンでも縫いやすい厚さのためハンドメイド作品でもよく使用されています。ちなみに、海外製の帆布は、厚みを表す単位が号ではなくoz(オンス)になります。
6号帆布の特徴
6号帆布は、経糸・緯糸のそれぞれが4本の糸で撚り合わせられているので、しっかりとした厚みがあり、非常に丈夫です。体育館用のマットに使われるほど強度が高く、擦れや引き裂きに強いという特徴があります。
9号帆布の特徴
9号帆布は、経糸が2本、緯糸が3本の糸で撚り合わせられた比較的柔らかい生地です。8号より薄手ながら、目地の密度が高く、丈夫で柔軟性があるため、トラックの荷台を覆うトラックシートなどによく使われています。
11号帆布の特徴
11号帆布は、経糸が2本、緯糸が1本の糸で撚り合わせられた、旧JIS規格の帆布の中で最も薄い生地です。軽くて柔らかいので、家庭用のミシンでも縫えることが特徴です。
帆布バッグは洗濯できる?洗い方とお手入れ方法
ここからは、帆布のお手入れ方法についてご紹介します。洗濯機での丸洗いは型崩れの原因や色落ちにつながるため避けましょう。
全体の洗い方
汚れが気になり、どうしても全体を洗いたいという場合には、洗面器に30度前後の水を張り、中性洗剤を溶かしバッグをゆっくり浸します。やさしく押し洗いをしたらしっかりとすすぎ、タオルなどで水気をとって陰干しするのがおすすめです。
小さな汚れの落とし方
バッグの表面や角の気になる小さな汚れは「消しゴム」でやさしく擦ってみましょう。帆布の色落ちや傷みの原因になるので力の入れすぎには注意。
水濡れの対応
雨やキッチンでの水ハネなど、帆布が水に濡れてしまった場合は、まず乾いた布で水分を拭き取ります。その後に、かたく絞った濡れた布でバッグ全体をやさしく拭くとシミ汚れを防止できます。
日常のお手入れ
帆布は、よりあわせた糸がみっちりと規則正しく織られた生地なので織り目にほこりが付着してしまうことも。帆布バッグを使った後は、衣類用のブラシや乾いた布でやさしく織り目に沿って払ってあげるのがおすすめです。より綺麗な状態で長く愛用できますよ。